若林ケンはもう 人生の半分をここで過ごしている
そして、いつのまにやらこの場末(若林はバマツと言う)で最も古い店になってしまった
元々”立ちんぼ”の並ぶミスティーなところにあって、そのドアを開けると季節や気分で取り替えられた絵画に囲まれて 客や友が座っている
何年も。時には20年以上も無沙汰していた客が訪れる 成功して忙殺されていた者 バブルでなにもかも失った者、結婚した女、そして別れた女 みんなここを忘れられない
「ワー懐かしい! よく来てくれたね」、若林は彼らを力一杯抱きしめて喜ぶ ちょっと恥ずかし顔の訪問者は、いつの間にかあの時とちっとも変わらない顔に戻って、その頃よく唄ってた歌を唄う
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